
15歳,メスのヒマラヤン
主訴:鼻づまり
胸部X線画像2方向が撮影された(画像は本誌P101参照)。
単純X線所見
胸部2方向(2枚)が撮影された。
胸部体表の皮下脂肪は比較的薄く観察される。心陰影のサイズは全体的に重度に拡大および変形しており,その腹側縁は広範囲に胸骨に密着して観察される。これと共に胸部気管は背側に圧排され,肺門部においてJ字状に湾曲している。後大静脈および横隔膜の一部は心陰影とシルエットを形成しその境界は不明瞭に観察される。またラテラル像において心陰影のX線不透過性は中央領域において著しく高く,比較的境界明瞭な楕円または卵円形構造が観察され,その周囲には中央部のX線不透過性よりも低い軟部組織性の不透過性が観察される。肺血管サイズは正常であり,肺野には気管支壁の軽度石灰化をともなう気管支パターンが示される。また,T8-9およびT10-11間には椎間板腔の狭小化およびT8-13間には椎体腹側における架橋形成性の造骨反応(変形性脊椎症)が認められる。
加えて同時に撮影された腹部頭側領域では,胃軸は頭側へ変位し肝臓の幅は薄く,また横隔膜背側縁はL1-2間の位置に観察される。
著しい巨大心であり,その原因として,心筋症(拡張型,肥大型,拘束型),心タンポナーデ,心嚢内腫瘍または心基部腫瘍,腹膜心膜横隔膜ヘルニアの可能性を考慮する必要がある。上部消化管造影,胸腹部エコー検査あるいはCT検査による精査が勧められる。
体幹部CT検査が実施された(下図参照)。
心嚢内には肝左葉および液体を貯留した小腸が観察された。心臓は左頭側領域に著しく変位している。腹膜心膜横隔膜ヘルニア(PPDH)であり,先天性疾患であると判断された。しかしながらこの症例は,主訴とは異なる偶発的所見であり,年齢および整復術による再潅流障害を考慮し,手術は見送られた。
これらのように著しい心拡大を示す症例でPPDHは偶然発見されることがあるだけではなく,単純X線画像のみで確定診断できないことがある。PPDHの確定診断として,消化管造影は心嚢内の消化管を証明するのに対し一般的に有効であるが,しばしば,PPDHでも消化管が心嚢内に観察されない場合もある。ほかに,超音波検査やCT検査も有効である。

CT検査画像(CTA:血管造影)
心嚢内に入り込んだ肝臓および液体を含んだ小腸が認められる。